EPC(エンジニアリング・調達・建設)業界で約60年にわたりリーディングカンパニーとして実績を重ねてきたS&B。ミッドストリーム、ガス処理、化学・精製、製紙、エネルギー転換など幅広い分野で複雑なプロジェクトを遂行してきました。
今回は、同社のSpecial Projects Engineering Solutionsチームに所属するエリック・ルーカス氏に、チームの役割や直面した課題、そしてPlantStream導入による効果について伺いました。ルーカス氏は、FEED(基本設計)、入札、初期設計段階に携わり、組織全体のコスト・スケジュールパフォーマンスの改善を推進しています。
EPCコントラクターの活用インタビュー
● 手作業による2Dマークアップやエクセルでの資材数量算出(MTO)は膨大な時間と工数を要し、特にレイアウト変更時の負担が大きかった。
● 提案段階で迅速に3Dイメージを作成できず、社内やクライアントとの合意形成が難しかった。
● 改訂のたびに資材数量を再集計する必要があり、入札スケジュールが延びていた。
● 従来の3Dプラットフォームに比べ、はるかに少ない工数で「実用的な」ルーティングモデルを生成できた。
● 初期テストで既存手法と同等のMTO精度が確認され、懸念が払拭された。
● セットアップにかかる負荷が小さく、スピードが求められる積算サイクルに適していた。
● 初期設計に要する時間を大幅に削減し、その分バリューエンジニアリングに注力できるようになった。
● 3Dイメージと数量レポートを同時に作成でき、部門間およびクライアントとのコミュニケーションが改善された。
● 提案チームは従来数週間かかっていた3種類のレイアウト案を、数日で提示できるようになった。
エリック・ルーカス氏: S&Bは米国に本拠を置くEPCコントラクターで、EPC、メジャープロジェクトエンジニアリング、アライアンスエンジニアリング、ダイレクトハイヤー建設の4つのサービスラインを通じてプロセスプラント産業を支えています。対象分野はミッドストリーム、化学、石油化学、エネルギートランジション、製油、製紙などで、原油蒸留やハイドロトリーティング、プロパン脱水素、ポリマー、バイオ燃料、水素、メタノール、アンモニアなど、多岐にわたるプラントを設計してきました。
私が率いるSpecial Projects Engineering Solutionsグループは、見積、設計、プロジェクト計画を全社横断で支援するデジタルツールやワークフローの導入を推進しています。
私は業界で23年の経験があり、そのうち20年をS&Bで過ごしました。配管設計や積算からキャリアをスタートし、現在は自動化やデジタル化を通じて部門横断的な連携を強化し、チームがより効率的に働ける環境づくりに取り組んでいます。
エリック・ルーカス氏: 導入以前は長年、手作業のワークフローに依存していました。例えば、2Dプロットプランに赤入れを行い、PFDやP&IDからMTOを算出し、レイアウトが変わるたびにすべてをやり直すといった作業です。これらは工数が膨大で、入札プロセスの効率やスピードに大きく影響していました。
さらに、提案初期段階で顧客に対して迅速かつ信頼性のある3Dイメージを示す手段がなく、合意形成が難しかったのです。加えて、レイアウト改訂のたびにMTO更新に数日を要していました。こうした課題が、プロジェクト初期から明確な3Dイメージを提示できるツールを探すきっかけとなりました。
エリック・ルーカス氏: はい。PlantStreamは、当社全体で進めている近代化施策の一部です。私たちは常にエンジニアリングツールの改善に取り組んでおり、その中心にあるのが「自動化」と「データの一元化」です。システム同士をシームレスにつなぐことで重複作業をなくし、意思決定のスピードを高めています。
大切なのは、既存の実績ある手順を置き換えるのではなく、それを補完・強化していくことです。そうすることで、少ない工数であっても品質を維持しながらプロジェクトを進めることができると考えています。
エリック・ルーカス氏: PlantStreamを知ったのは、業界での口コミや社内でのツール評価ミーティングがきっかけです。カンファレンスやセミナーで話を聞いた同僚もいて、初期設計ツールの検討中に自然と候補に挙がりました。特に印象的だったのは、従来の工程を省き、瞬時にルーティング済みの3Dモデルを生成し、資材データまで抽出できる点です。
導入時から目標は明確でした。初期モデリングをスピードアップし、資材数量算出にかかる時間を減らし、提案フェーズの早い段階で信頼性のある3Dモデルを提示する。それによってチームの認識をすばやくそろえ、プロジェクト範囲の議論をより効率的に進めることを目指しました。
エリック・ルーカス氏: 一番の価値はやはりスピードです。数時間でラック全体を自動ルーティングし、干渉確認まで行い、従来は数日かかっていたMTOを出力できました。特に ワンクリック で作成できるMTOレポートは非常に有用で、積算担当者は設計者の赤入れを待たずに、整理された数量データをすぐ入手できます。
さらに、モデリングの速さも大きな強みでした。同じモデルから3Dイメージとレポートを同時に生成できるため、初期のコンセプト設計で変更が入っても、PlantStreamの自動ルーティング機能などのおかげで影響を最小限に抑えることができました。
エリック・ルーカス氏: 既存の手法と比較して、使いやすさや精度、他プラットフォームとの連携性をチェックしました。設計職以外のユーザーでも扱いやすいか、どれだけ工数削減につながるかも重視しました。加えて、コストやスケーラビリティも重要な判断基準となり、複数部門の関係者を交えて評価を進めました。同時に積算チームと一緒に初期テストを行い、結果がきちんと整合したことで早い段階から自信を持てました。
また、S&Bの配管リーダーの一人からは「プラントプロットを視覚的に確認し、大規模
な変更を加えて最適化し、その後ボタン一つで数秒のうちに再ルーティングできる。これはまさにゲームチェンジャーです。タイムラインを気にせずアイデアを検討でき、成果物全体の質を高めることにつながります。」というフィードバックもありました。
エリック・ルーカス氏: 決め手は、PlantStreamが「スピード」と「信頼性」を定量的に示せたことでした。まず積算チームと実証プロジェクトを実施し、ラックのMTO比較から始めました。その結果が当社のベンチマークと一致し、そこから徐々に適用範囲を広げていきました。この成功体験が、自信を持って他のプロジェクトにも展開していく後押しとなったのです。
導入検討の初期段階から、積算、配管、構造など複数の部門を巻き込みました。特に印象的だったのは、比較的低い導入ハードルで「使えるモデル」を作成できた点です。このスピードと精度の両立が、短期間で成果が求められる提案業務において戦略的な優位性になると確信しました。 もちろん、当初は懸念もありました。最大の懸念は精度、次いで既存システムとの互換性や設計者の学習コストでした。精度については、実際のプロジェクトを再現して数量を比較することで懸念を払拭できました。学習面では、チャンピオンチームを組織し、クイックスタートガイドを作成。さらにヒューストンとインドで集中トレーニングを実施し、早期の成功事例を共有することで社内理解を広げていきました。
そして何より 「PlantStreamは従来の確立された手順を置き換えるのではなく、それを洗練させるツールである」 と位置づけたことが、懐疑的だった人々を支持者に変える大きなきっかけになりました。
エリック・ルーカス氏: 現在は主にpre-FEEDや積算フェーズでPlantStreamを活用しています。ヒューストンとインドの配管チームが、初期段階のレイアウト検証やラック全体の自動ルーティング、MTOの作成に利用しています。短時間で3Dモデルを作成できるため、提案チームは数週間かかっていた代替レイアウトを数日で提示できるようになり、顧客により早い段階で全体像を示せるようになりました。結果として、コンセプトモデリングにかかる工数を大幅に削減し、手書きスケッチやスプレッドシートでの数量拾い出しをほぼ不要にしました。積算と設計の連携も強化され、社内からは「データに素早くアクセスでき、より高品質なプレゼン資料が作れる」と高く評価されています。顧客からも「どうやってこんなに早くモデルを作ったのか」と驚かれることが多いですね。
これらの改善によって、当初の課題だった反復作業の時間やスコープの不明確さを解消でき、とりわけFEL1/2の段階で大きな効果を発揮しました。今後はヒューストンとインドをつなぐことで真の24時間体制を実現し、分野横断的な活用をさらに広げていく計画です。
エリック・ルーカス氏: 最も際立っているのは、自動ルーティングエンジンです。これによって大幅な時間短縮が可能になり、従来は手作業に頼っていた多くの作業を省くことができました。また、ワンクリックでMTOレポートを迅速に生成できる点も非常に価値があります。さらに、レイアウトを一からやり直さなくても柔軟に調整できる点も大きな利点です。
日常的にPlantStreamを最も活用しているのは、ヒューストンとインドにいる配管チームです。合計5〜6名ほどになりますが、設計者と積算担当者の双方にとって、共通の基盤となるツールとして活用されています。
エリック・ルーカス氏: サポート対応は常に迅速で安定しています。ヒューストンと東京の時差があるにもかかわらず、ほとんどの問題は1営業日以内に解決されています。また、新機能の導入時にはパワーユーザーに丁寧な説明をしてくれるだけでなく、ナレッジベースの記事や動画クリップも提供されるため、両拠点でスムーズに展開できています。 今後については、特に複雑なシナリオに対応できるようルーティング機能のさらなる強化に期待しています。マルチディシプリン統合の開発が進めば、部門横断での活用にさらに効果を発揮するでしょう。また、新しい機能が増えるにつれて、新規ユーザーが早くキャッチアップできるように、ステップごとのドキュメントをさらに充実させてほしいとも思います。とはいえ、私たちのフィードバックを次のスプリントに積極的に反映してくれる姿勢があるので、総じて非常に信頼できるサポートだと感じています。
エリック・ルーカス氏: 現在、当社ではPlantStreamをpre-FEEDや積算フェーズの標準業務手順に組み込む作業を進めており、さらに適用範囲を拡大していく計画です。直近の目標は、初期設計段階で構造鉄骨や電気トレイも配置できるようにし、配管・土木・電気の各チームが同じ環境でレイアウトを検討し、より迅速に意思決定を行えるようにすることです。
また、トレーニング体制の強化も進めています。ヒューストンやインドの主要な提案チームそれぞれに少なくとも1人はパワーユーザーを配置する予定です。これにより、ヒューストンで作成したモデルを業務終了時にインドに引き継ぎ、インドが夜間に作業を進め、翌朝ヒューストンが新しいバージョンを受け取る――そんな24時間体制でのプロジェクト推進が可能になります。
エリック・ルーカス氏: 特に初期段階において、プロジェクト遂行のスケジュールを短縮させるうえで重要な役割を果たすと考えています。クライアントからの要望や設計変更に迅速に対応し、それをより明確に提示できることで、提案フェーズにおける当社の競争力は確実に高まります。 さらに、3D環境でスコープを視覚的に共有できることは、社内での計画立案にも、クライアントとのディスカッションにも非常に有効です。これは社内外における意思疎通をスムーズにし、結果としてプロジェクト全体の成果につながる大きな価値をもたらすと考えています。
エリック・ルーカス氏: 初期段階のプロジェクト遂行に取り組む企業にとって、PlantStreamのようなツールはワークフローの一部を効率化するうえで非常に有効だと思います。特に、短期間で成果を出したり、スピーディなコミュニケーションが求められる場面では大きな効果を発揮するでしょう。 ただ大切なのは、このツールが自社の全体戦略の中でどのように位置づけられるのか、そして既存のプロセスをどう補完できるのかをしっかり見極めることです。目的は「車輪を一から作り直すこと」ではなく、「その車輪をより速く、より良く、より効率的にすること」にあると考えています。
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